アスリートが自分の能力を測ることの重要性 [能力を数値化せよ!]

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竹井 尚也

東京大学 特任研究員/東京大学 陸上運動部コーチ

スポーツ科学(運動生理学)の研究者。科学的根拠に基づく運動指導を行っています。

指導した東大生から2年連続箱根ランナーが輩出しました。

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目次

正しい努力をしないと報われない!

多くのアスリートは、綿密にトレーニングの計画を立てて、より高い競技力を身に付け、競技会に挑みます。稀に小難しいことは考えずに、自らの直感を信じてトレーニングを行っている天才肌のアスリートもいますが、ほとんどのアスリートは真似をしてはいけません。直感を信じて精一杯の努力をしても、間違ったトレーニングをしていては、もちろん良い結果は望めません。「努力は必ず報われる」というのは間違いで、「正しい努力をしないと報われない」という感覚を持つことが大事です。あまり考えずにとりあえずやってみるというスタンスでは、たいていの場合で失敗します。

自分を測ることは、「現在地」と「目的地」を明確化することである

では、報われるための「正しい努力」をするにはどのようにすればよいのでしょう? 正しい努力をするために、まず必要なことは自らの能力を測ることです。自らの能力を測り、数値化することで、今の自分がどこにいるのかを知ることができます。例えば、今の自分のスクワットの最大挙上重量が体重の1.6倍とします(余談ですが数値によっては他人と比較するために体重や身長で補正したほうがいい場合もあります)。そうすると他人と比べて、自分がどの程度の位置につけているかということが分かるのです。また、次に自分が目標とするレベルの選手層では、スクワットを平均で体重の2倍持ち上げるとします。そうすると、今の自分の位置に加えて、目的地までの距離が明確にわかります。能力を事前に測定・評価し数値化せずにトレーニングを始めると、自分の現在地も目的地も分かりません。これは、今から船旅に出るのに海図もコンパスも持たずに、当てずっぽうの方角を目指して大海に乗り出すようなものです。したがって、能力を測定・評価してから、トレーニング計画を始めないと、努力が水泡と化す確率が高まります。

数値化しておけば、トレーニングの成果を評価するのにも役立つ

自分の能力を測り、数値化することのメリットはもう一つあります。それは、トレーニングの効果を評価することができるということです。競技能力を構成する要素は無数にあります。例えば、最大筋力、パワー、敏捷性、持久力 などなど…。こうした要素の一つ一つが集まって、最終的に競技能力として反映されます。その際に、各要素の数値化を怠ると、結局どの要素がどの程度上昇して、競技能力が改善されたかが分からなくなります。そこで、トレーニングによる効果をきちんと把握するには、各要素をトレーニング介入前後で測定・評価することが大事です。こうした測定・評価がきちんとできないと次のトレーニングを見誤ることがあります。例えば、ある選手が競技能力が向上した要因が主にパワーの向上にあるとしましょう。したがって、それまでのトレーニングではパワーを効果的に向上させ、その選手にとって良いトレーニング処方であったといえます。しかし、その選手のパワーの伸びる余地(Trainability) がもうほとんど残っていなかったとするとどうでしょうか? それまでの良いトレーニングを継続してしまうと、今度はほとんど競技能力を上げられない悪いトレーニングとなりえます。このように同じトレーニングでも選手のその時の状態によって、良いトレーニングにも悪いトレーニングにもなります。日頃から測定・評価をして、それを基にトレーニングをしていないとその時々にベターなトレーニングをするのは難しくなります。

アスリートの何を測ればいいのか?

では、実際に測定・評価をする際には、選手の何を測ればよいのか? それは、競技種目によってことなりますが、その種目に特に重要そうな項目をいくつかピックアップして決めるとよいと思います。多くの競技スポーツにおいて、既に先人たちが測定している項目がある場合があります。その場合は、これまでのデータの蓄積も使えるので、その項目を積極的に用いましょう。また、その競技種目に重要そうな要素をピックアップした後には、各要素にある程度の重み付けをするのが大事です。仮に各項目ですべて平均レベルの選手がいた場合は、その種目に最も重要度が高い要素をまず優先的に鍛えます。最重要の要素がある程度鍛えられると、トレーニングする余地が少なくなってきます。そうしたら、二番目に重要な要素を比重を重くしていくというように、各要素を並列に扱わずに、いくらか重み付けして扱うことが肝要です。

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