[時間的効率の良いトレーニング方法]スプリントインターバルトレーニングとは?

持久性運動トレーニング
この記事を書いた人
竹井 尚也

東京大学 特任研究員/東京大学 陸上運動部コーチ

スポーツ科学(運動生理学)の研究者。科学的根拠に基づく運動指導を行っています。

指導した東大生から2年連続箱根ランナーが輩出しました。

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スプリントインターバルトレーニング (SIT)とは、一般に数十秒の”全力運動”を数分の休息を挟み、複数回反復するトレーニング方法のことです。このSITはどのようなトレーニング効果をもたらすのでしょうか? SITは中長距離走のトレーニングというよりも、むしろ短距離走のトレーニングだと思っている人もいるのではないでしょうか?
しかし、近年の研究によるとSITは、持久性運動能力と関係の深い因子である最大酸素摂取量や骨格筋のミトコンドリア酵素活性を改善し、持久性アスリートに有効なトレーニング方法の一つとして注目されています (Gibala and McGee, 2008)。

目次

忙しい人向けにざっくりまとめると

●スプリントインターバルトレーニング (SIT)は時間的効率の良いトレーニング方法
●時間的制約を受ける人にオススメ
●競技レベルの高いアスリートにとっても高強度トレーニングの一つとして有効

SITは時間的効率の良いトレーニング方法である

運動は、アスリートのトレーニングとしてだけでなく、一般人が健康に過ごすためにも必要なものです。一方で、現代人は、日々多忙な生活を送っており時間的制約により必ずしも十分な運動時間を確保することが出来ません (Trost et al., 2002)。また、アスリートの中でも学生アスリートやフルタイム勤務の社会人アスリートは、時間的制約により計画していたトレーニングを完遂できないということもあるでしょう。そこで、短時間で高い効果を得ることの出来る”時間的効率の良いトレーニング”が求められます。

竹井尚也
竹井尚也

SITは、運動強度が高い分、短時間でも十分なトレーニング効果が得られます!


Gibara et al (2006)は一般男性を対象に、2週間(計6回)のトレーニング実験を行い、被験者を4-6×30秒全力スプリントを4分間完全休止もしくはごく軽い運動を挟み行う群(SIT群)と持久性トレーニング を行う群(ET群, 90-120min@65%VO2max)に分けました。その結果、両群で同等のミトコンドリア酵素活性、筋の緩衝能力、グリコーゲン貯蔵量の改善が見られました。また、運動パフォーマンステストとして50kj自転車タイムトライアル (約2分間)及び750kj自転車タイムトライアル(約1時間)を実施したところ、両群においてそれぞれのテストで同等のパフォーマンス改善があったことを報告しています。2週間のトレーニングに費やした時間はSIT群が~2.5時間であったのに対し、ET群は~10.5時間でした。

竹井尚也
竹井尚也

ウォームアップやクールダウンの時間を含めてもSITでは、半分以下の時間でトレーニングできます。


以上のことからSITは時間的効率の良いトレーニング方法として、その有効性が示されました。また、約2分間及び1時間のタイムトライアルのパフォーマンスが改善していたことからも、30秒間の全力運動を反復するSITは、単に中距離パフォーマンスを向上させるトレーニングだけではなく、1時間という長時間運動のパフォーマンスをも改善させることが示されました。Gibalaらの研究を皮切りに、SITもしくは高強度インターバルトレーニング(HIIT)が時間的効率がよく、効果的にトレーニング効果をもたらすトレーニングであるという研究報告は近年多数なされています。

竹井尚也
竹井尚也

SITのようなトレーニングは一般に中距離選手が行う練習に似ていますが、実は長距離パフォーマンスも高めるのは驚きですね!

競技レベルとトレーニング強度

これまでの内容でSITが時間的効率の良いトレーニング方法であることはご理解いただけたと思います。では、SITは時間的制約の受ける一般ランナーや学生、社会人アスリートだけにおすすめのものなのでしょうか? 十分なトレーニング時間を確保できる実業団やプロアスリートには不要なものなのでしょうか?
Londeree et al (1997)は、一般人とトレーニングを積んだ人を対象に、異なるトレーニング強度でトレーニングを行った際のトレーニング効果の違いについて34個の研究を統合、統計解析することにより検討しました (メタ解析)。その結果、トレーニングをほとんど積んでいない人の場合、LT付近の強度でも十分にトレーニング効果が得られるが、一方でトレーニングを積んだ人の場合、LT付近のトレーニングでは能力の改善を起こしにいことが報告されています。このことから競技レベルの高いアスリートにとって、中強度トレーニングの刺激は、生理学的適応を引き起こすのに必ずしも十分ではなく、高強度トレーニングが必要であるといえます。

竹井尚也
竹井尚也

初心者~中級者の内はどんなトレーニングでも能力が伸びますが、中級者~上級者になると高強度のトレーニングが重要です!

まとめ

SITは、長時間の持久性トレーニングと同等の適応をもたらす時間的効率の良いトレーニング方法です。また、SITは数分の高強度運動のパフォーマンスを高めるだけでなく、1時間程度の長時間運動のパフォーマンスをも高めるトレーニングです。競技レベルの高いアスリートにとっては、高強度トレーニングの重要性がより高まるのでSITを高強度トレーニングの一つとして選択してもよいと思います。
一方で、高強度トレーニングにはSIT以外にも様々なバリエーションがあります。選手の特性やトレーニング環境などに応じて、各々に最適なものを高強度域のトレーニングとして選択すると良いと思います。

参考文献

1) Gibala and McGee. 2008. Metabolic Adaptations to Short-term High-Intensity Interval Training: A Little Pain for a Lot of Gain?
2) Trost et al. 2002. Correlates of adults’ participation in physical activity: review and update.
3) Gibala et al. 2006. Short-term sprint interval versus traditional endurance training: similar initial adaptations in human skeletal muscle and exercise performance.
4) Londeree et al. 1997. Effect of training on lactate/ventilatory thresholds: a meta-analysis.

 

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