[知ってる?]絶対運動強度と相対運動強度ってなに?[相対運動強度を用いて正しく鍛えよう]

持久性運動トレーニング
この記事を書いた人
竹井 尚也

東京大学 特任研究員/東京大学 陸上運動部コーチ

スポーツ科学(運動生理学)の研究者。科学的根拠に基づく運動指導を行っています。

指導した東大生から2年連続箱根ランナーが輩出しました。

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運動トレーニングをする際には、どのくらいの運動強度で、どのくらいの時間行うかを試行錯誤することが重要です。それぞれの要素を変化させることで、トレーニング効果が変わるため、適切な運動強度や時間を設定することは長期的な競技能力の向上に欠かせません。本記事では、運動強度について説明したいと思います。

目次

そもそも運動強度ってなに?

適切な運動トレーニングを行う際に、情報収集をしていくと「運動強度」という言葉に出会います。運動強度という言葉の定義について曖昧な理解でいると正しいトレーニング処方ができないかもしれません。まず、運動強度とは何かについてご説明しましょう。

運動強度は運動の強さ

運動強度とは、言葉の通り運動の強さを表しています。例えば、ジョギングのような運動は運動強度が低く、「低強度運動」などと呼ばれます。一方で、心拍数が最大近くなるような速度の速いランニングは運動強度が高い運動であり、「高強度運動」と呼ばれます。端的に言えば、ランニングであれば「速度が遅い=運動強度が低い」、「速度が速い=運動強度が高い」といえます。

キツさと運動強度は必ずしも一致しない

一方でよくある勘違いとして、「主観的なキツさが大きい運動=高強度運動」と捉えてしまうことがありますが、これは間違いです。例えば、ゆっくりのジョギングでも数時間続けると主観的なキツさが高くなりますが、あくまで運動強度は走るペースのことを指しますので、ジョギングは高強度運動ではなく低強度運動です。ここを誤って認識して、高強度運動が大事という情報から主観的なキツさが高いトレーニングが大事などと考えてしまうと必ずしも良好なトレーニング効果は得られません

絶対運動強度と相対運動強度ってなに?

運動強度と一口に言っても、実際には絶対運動強度と相対運動強度があります。絶対運動強度とは、ランニングで言えばどれくらいの速度で走るかで、誰にとっても不変(=絶対)のものです。一方で、例えば、1キロ4分というペースは人によってキツさが違います。エリートランナーにとっては、1キロ4分は朝飯前のペース(=低強度運動)ですが、普段運動をしていない人にとっては強度の高く、長時間維持できないペース(中~高強度)です。このように同じ絶対運動強度(=1キロ4分)なのに、感じるキツさが違うのは相対運動強度が異なるからです。

絶対運動強度と相対運動強度の違い

相対運動強度は、心拍数や最大酸素摂取量、乳酸性作業閾値(LT)といった値の相対値として表されます。例えば、最大心拍数が200回/分のAさんとBさんがいたとして、1キロ4分で走った際に、Aさんの心拍数が120回/分、Bさんの心拍数が160回/分であったとします。そうすると、絶対運動強度は1キロ4分で同一ですが、相対運動強度はAさんが60%最大心拍数で、Bさんが80%最大心拍数と大きくことなります。そうすると、見かけは1キロ4分ペースで同じ運動をしているようですが、実際にはBさんの方がキツイ運動をしていることになります。

トレーニングを組み立てる際には相対運動強度を基にするのが重要

トレーニングを組み立てる際には、絶対運動強度ではなく、相対運動強度を基にすることが重要です。なぜなら、同じ1キロ4分でも人によって相対運動強度が異なり、体にかかるトレーニング刺激が異なるからです。人はトレーニングによって体に加わった刺激に応じて適応します。つまり、適切な相対運動強度でトレーニングすることで狙った負荷を与えなければ、思うような効果が得られないことになります。

同じペースのトレーニングでも同じ効果が得られるとは限らない

しかし、実際にはトレーニングを組み立てる際に、他人のトレーニングを参考にすることが多いと思います。他人のトレーニングを参考にする際に、絶対運動強度(=どのくらいのペースで行っているか)ではなく、相対運動強度はどれくらいかを常に考えるようにしましょう。もし、絶対運動強度(=ペース)の他に、相対運動強度(心拍数など)が記載されているなら、相対運動強度をより意識した方が良いです。特に、低強度運動は競技レベルの高い人のメニューを真似できてしまいますが、レベルの高い人の1キロ4分とあなたの1キロ4分は必ずしも同じ相対運動強度でないことに留意すべきです。相対運動強度が異なるのに、1キロ4分という絶対運動強度と運動時間だけを取り入れてしまうと実は全く違うトレーニング刺激や疲労をもたらすことになります。

まとめ

運動強度を正しく理解して適切なトレーニングを行いましょう! その際に、絶対運動強度と相対運動強度の違いをしっかりと理解し、自分の狙ったトレーニング刺激を得ることが重要です。

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