[LSDが効果的?]心臓を鍛えるにはどうすればよい?[一回拍出量の頭打ち]

持久性運動トレーニング
この記事を書いた人
竹井 尚也

東京大学 特任研究員/東京大学 陸上運動部コーチ

スポーツ科学(運動生理学)の研究者。科学的根拠に基づく運動指導を行っています。

指導した東大生から2年連続箱根ランナーが輩出しました。

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最大酸素摂取量は、持久性運動パフォーマンスを決定づける重要な要素の一つです。最大酸素摂取量を高めるには、心臓が送り出せる血液量(心拍出量)を増やすことも重要です。本記事では、心臓を鍛えて、心臓が送り出せる血液量(心拍出量)を増やすためのトレーニングについて解説します。

ゆっくり長く走るのが心臓を鍛えるのに効果的?

よくスポーツ現場では、心臓を鍛えるためにはゆっくり長く走るのが効果的といわれています。では、なぜ心臓を鍛えるのにゆっくり長く走るのが良いといわれるのでしょうか? その根拠は、運動中の心臓の拍動の仕方にあります。

運動中に心臓から送り出される血液量の変化

私たちが運動をする時、運動強度の増加(e.g., ペースの上昇)に従って、心臓が全身に送り出す血液量は増加します。つまり、運動強度が増加し、全身が運動で使う酸素の量が増えるのに対応するように、心臓がたくさんの血液を全身に送り届けようとします。心臓が送り出す血液量(心拍出量)は、心臓が一回拍動するときに送り出される血液量(一回拍出量)と心臓が拍動する回数(心拍数)によって決まります(下の式参照)。したがって、運動中の心拍出量の増加は、一回拍出量や心拍数が高まることによって起こります

心拍出量 (L/分) = 一回拍出量(ml/回)×心拍数(回/分)

一回拍出量の増加は頭打ちする

心拍数は、運動強度が増大するに従って、ほぼ直線的に増加します。一方で、エリート選手を除く、多くの選手で一回拍出量の増大は、比較的低強度(40-50%VO2max)で頭打ちします(Zhou et al., 2001)。そこで、一回拍出量が頭打ちする強度かそれより少し強い強度(=心臓が強く収縮する強度, 40-70%VO2max)で長く運動するのが、心臓を鍛えるのに効果的と考えられています。

低強度運動でなくても、心臓は鍛えられる

一回拍出量の頭打ち現象から、心臓を鍛えるには比較的低強度(40-70%VO2max, ジョグ~ペース走)がよいと考えられていますが、実はインターバルトレーニングでも心臓を鍛えることができます
Daussin et al., (2007)の研究では、一般人を対象に8週間のトレーニング実験を行い、60%VO2maxで20-35分運動する群(CT)と1分間の90%VO2maxの運動を4分間の低強度運動(50%VO2max)を挟みながら、4-7回繰り返す群(IT)の効果を比較しました。その結果、この研究では、IT群でのみ有意な心拍出量や一回拍出量の増大が確認されました
この研究の限界点としては、両群の総仕事量を統一するために、CT群の運動強度や時間が低く設定されている点が挙げられます。そのため、CT群のボリュームを多くした時にCT群でも心臓へのトレーニング効果が見られる可能性が考えられます。しかしながら、両群ともに一回拍出量の頭打ちが起きる強度(>40-50%VO2max)で同じ時間(20-35分)運動していますが、トレーニング効果に違いが出ています。したがって、一回拍出量が最大となる強度で運動する時間だけが心臓を鍛えるために重要な要素ではないことが示されています。むしろ、高強度インターバルトレーニング特有の心臓を鍛える効果もあるかもしれません。

実際にトレーニングをする際の注意点

Daussin et al., (2007)の研究からも分かるように、必ずしも低強度トレーニングでなく、高強度インターバルトレーニングでも心臓が鍛えられることが示されています。一方で、実際には、低強度トレーニングか、高強度インターバルトレーニングのどちらか一方だけをする訳ではなく、それぞれのバランスが重要です。現場では、心臓を鍛えるには低強度で長く走らなければいけないと勘違いされている方もいるかと思います。低強度で長く走ろうとするがあまり、全体のトレーニングの中で低強度の頻度や量が過度に多くなってしまい、その他のトレーニングが疎かになると良好なトレーニング効果は得られません。心臓を鍛えるには、LSDだけでなく、高強度インターバルトレーニングも有効です。LSDばかりでも高強度インターバルトレーニングばかりでもないバランスの良いトレーニングを心がけましょう

まとめ

  • 運動中には、心拍数や一回拍出量が増大することで、心拍出量が増大する。
  • 一回拍出量は比較的低強度で頭打ちする。
  • 心臓を鍛える(心拍出量や一回拍出量を高める)には、ジョグ~ペース走だけでなく、実はインターバルトレーニングも有効
  • 各強度のトレーニングをバランスよく行うことが大事

参考文献

  1. Zhou B, Conlee RK, Jensen R, Fellingham GW, George JD, Fisher AG. Stroke volume does not plateau during graded exercise in elite male distance runners. Med Sci Sports Exerc. 2001;33(11):1849-1854. doi:10.1097/00005768-200111000-00008
  2. Daussin FN, Ponsot E, Dufour SP, et al. Improvement of VO2max by cardiac output and oxygen extraction adaptation during intermittent versus continuous endurance training. Eur J Appl Physiol. 2007;101(3):377-383. doi:10.1007/s00421-007-0499-3

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