筋トレ形式のタバタプロトコルでも持久性能力は高まる![Stay Homeでも出来る!]

持久性運動トレーニング
この記事を書いた人
竹井 尚也

東京大学 特任研究員/東京大学 陸上運動部コーチ

スポーツ科学(運動生理学)の研究者。科学的根拠に基づく運動指導を行っています。

指導した東大生から2年連続箱根ランナーが輩出しました。

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タバタプロトコルとは、20秒のスプリント運動(≈170%VO2max)を10秒の休息を挟み、6~8回程度繰り返すトレーニング方法です。タバタプロトコルの効果を検証した研究では、タバタプロトコルは運動時間が極めて短いにも関わらず、一般的な持久性運動(60分@70%VO2max)と同様のトレーニング効果をもたらすことが報告されています(Tabata et al., 1996)。タバタプロトコルは一般に、自転車運動や走運動などを用いて研究・実践されてきました。
一方、近年では、タバタプロトコルを20秒間の筋力トレーニングを繰り返す形式で実施するケースがスポーツ現場で多く見受けられます。筋トレ形式で行うことで、特別な機器(トレッドミル等)を必要とせず、さらに屋外・室内を問わず実施することができます。しかし、本当に筋トレ形式でも走運動や自転車運動で行う時と同様の効果が得られるのでしょうか? 本記事では、筋トレ形式のタバタプロトコルの効果について徹底解説します!

目次

忙しい人向けにざっくりまとめると

  • タバタプロトコルは時間的効率の良いトレーニング方法
  • 筋トレ形式のタバタプロトコルでも、持久性トレーニングと同等の適応を起こすことができる
  • 大きな筋群を使う筋トレ種目を選択するのが重要
  • 単一の筋トレ種目を繰り返す方法の方が、本来のタバタプロトコルに近い
  • いろんな筋トレ種目を織り交ぜる方法は、末梢(骨格筋)の負荷を抑えながら中枢(心肺)に負荷をかける工夫として有効かも

筋トレ形式のタバタプロトコル vs. 持久性トレーニングの研究

Zelt et al. (2012)は、25名のrecreational activeな女性を対象に、4週間の筋トレ形式のタバタプロトコルもしくは持久性トレーニングを実施し、その前後で効果測定を実施しました。トレーニング内容は以下の通りです。

  • 持久性トレーニング群:30分トレッドミル走@85%HRmax, 4回/週, 4週間
  • タバタプロトコル群:20秒の筋トレ運動+10秒レストを8セット, 4回/週, 4週間
    筋トレ種目は、大きな筋群を使う種目を選択
    適切なフォームが維持できる範囲で各本当たりなるべく多くこなすよう努力する
    日ごとに筋トレ種目を変えるが、1回のトレーニングでは同じ種目を8回やり続ける(例. バーピーの日なら、バーピー8セット行う)

なお、両群ともトレーニング前には、軽運動でのウォーミングアップを行っています(この研究では、5階分の階段を歩いて登り降りする)。

トレーニング介入の結果、VO2peakと漸増負荷運動試験での疲労困憊までの時間が、両群で同等に向上したと報告します。このことは、一般的な持久性運動(ランニングやサイクリング)でなくとも、筋トレ形式のタバタプロトコルを行うことで十分にVO2peak(7%増)を向上させることができることを示しています。一方で、この研究はあくまで筋トレ形式のタバタプロトコルと持久性トレーニングを比較したもので、タバタプロトコルを筋トレでやっても自転車等でやっても同じという結論は導けません。自転車運動を用いたタバタプロトコルの先行研究では、3週間のトレーニングで10%のVO2maxの増加を報告しています(Tabata et al., 1996)。被験者(男性 vs. 女性)や測定時の運動様式(自転車 vs. 走運動)の違いにより単純に比較はできませんが、もしかしたら自転車運動等を用いたタバタプロトコルよりかは少し効果は劣る(7%増 vs. 10%増)かもしれません。それでも、トレーニング効果の大きいと思われる中強度の持久性トレーニング(30分間@85%HRmax, ペース走程度)と同等の効果が得られたことから、筋トレ形式のタバタプロトコルは最大酸素摂取量や持久性能力を高めるトレーニングの一つとして十分に応用可能であるといえます。

竹井尚也
竹井尚也

筋トレを20秒×8回、10秒レストで行うことでも心肺機能が向上し、持久性パフォーマンスが高まる!

具体的な筋トレ種目

今回の実験では、大きな筋群をたくさん動員する(使う)筋トレ種目を8回×20秒行った際の効果を示しています。心肺への応答(心拍数・酸素摂取量増)は、大きな筋群をたくさん動員するほど大きくなります。一方、動員される筋が少ない筋トレ種目を選択すると、心肺機能への適応が必ずしも同等に起こらないことが予想されます。なるべく大きな筋群が動員される種目を選択するのが重要です。そこで、実験で用いられた筋トレ種目の中から器具を用いず、Stay Homeで取り組むことができる種目をピックアップしてご紹介します。実験では、1回のトレーニングで複数種目を行うのではなく、同じ種目を8回続けて行っています(例. バーピーの日なら、バーピーのみを8回×20秒)。

竹井尚也
竹井尚也

大きい筋群を使うことが心肺に負荷をかける上で重要です。小さい筋群を使う運動(例えば、カーフレイズ)を20秒やっても息が上がりませんよね?

1.バーピー

The Burpee

2. マウンテンクライマー

Reebok CrossFit ONE Movement Demo "Mountain Climber"

3. ジャンプジャックス

Jumping Jacks

同じ筋トレ種目ばかりやるか異なる種目を織り交ぜるか。

今回紹介した実験では、同じ筋トレ種目を8回続けて行いましたが、異なる筋トレ種目を織り交ぜて(例. 4種目を2サイクル)はだめなのでしょうか? 

その答えはトレーニング目的が何かにより異なります。単一種目を8回繰り返す形式と異なる種目を織り交ぜる形式の違いを検証した研究は私の知る限りありません。したがって確固たるエビデンスに基づきませんが、心肺機能への適応を考えた時には、筋トレ種目は移り変わったとしても20秒の高強度運動を反復しているのには変わりないので、どちらの条件でも心肺は同様の応答をすると予想されます(同程度の筋量が動員されている前提)。そうすると心肺への負荷はおおよそ同等となり、同様の中枢の適応(VO2max増)が得られると予想されます。一方で、末梢(骨格筋内)の適応を考えた時には、異なる種目を織り交ぜると、各筋ごとで見た時の運動休息比が変わってしまう可能性があります。例えば、大胸筋を主に使う種目と大腿筋を主に使う種目などを交互に行う場合、それぞれの筋ごとでみると、本来は20秒運動:10秒休息(運動休息比 2:1)なのが、20秒運動:30秒休息(運動休息比 2:3)になってしまいます。すると、休息時間が3倍になり、本来タバタプロトコルで起こるのと異なる筋内環境になり、トレーニング効果に違いが出る可能性が考えられます。なので、特に末梢の適応(例. ミトコンドリアなどの適応)を一般的なタバタプロトコルと同様に起こしたいときは、いろんな種目を織り交ぜるのは得策でないかもしれません。

竹井尚也
竹井尚也

いろんな種目を織り交ぜて行うと、それぞれの骨格筋への刺激は減ってしまい、骨格筋内での適応は減弱する可能性が考えられます。

一方で、心肺機能を高めたいなど中枢の適応が目的の場合はいろんな筋トレ種目を織り交ぜる方法が良いかもしれません。それは、先ほどの運動休息比の変化を逆手に取り、中枢への刺激(心拍数・換気量増)を起こしながらも、各筋ごとの休憩時間は長くすることができるためです。特に体力レベルが低い人にとっては、単一の筋に負荷が集中すると、中枢(心肺)の限界でなく、末梢(骨格筋)の限界により早めにオールアウトしてしまい、トレーニングボリュームが確保できない可能性が考えられます。したがって、いろんな種目を織り交ぜる方法は、末梢(骨格筋)の疲労を抑えながら、中枢(心肺)にしっかり負荷をかける工夫として使うこともできます

竹井尚也
竹井尚也

心肺に負荷をかけながら、それぞれの骨格筋への負荷を下げたいならいろんな種目を織り交ぜてやるのもあり!

まとめ

  • タバタプロトコルは時間的効率の良いトレーニング方法
  • 筋トレ形式のタバタプロトコルでも、持久性トレーニングと同等の適応を起こすことができる
  • 大きな筋群を使う筋トレ種目を選択するのが重要
  • 単一の筋トレ種目を繰り返す方法の方が、本来のタバタプロトコルに近い
  • いろんな筋トレ種目を織り交ぜる方法は、末梢(骨格筋)の負荷を抑えながら中枢(心肺)に負荷をかける工夫として有効かも

参考文献

  1. Tabata et al. (1996) Effects of moderate-intensity endurance and high-intensity intermittent training on anaerobic capacity and VO2max.
  2. Zelt et al. (2012) Extremely low volume, whole-body aerobic-resistance training improves aerobic fitness and muscular endurance in females.

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