[HIIT] 高強度インターバルトレーニングを成功させるための5要素 [リカバリーも大事]

トレーニング科学
この記事を書いた人
竹井 尚也

東京大学 特任研究員/東京大学 陸上運動部コーチ

スポーツ科学(運動生理学)の研究者。科学的根拠に基づく運動指導を行っています。

指導した東大生から2年連続箱根ランナーが輩出しました。

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目次

高強度インターバルトレーニングの特徴

高強度インターバルトレーニング(High intensity interval training, HIIT)は、これまでにトップアスリートのトレーニングの中で経験的に利用されてきており、さらに多くの研究でもその有効性が確認されています。HIITは、一般人や初級~中級者の競技力を効果的に高めるトレーニングとして有効なだけでなく、トップアスリートの競技能力をさらに引き上げることのできるトレーニング方法です。HIITの特徴として、身体へのストレス(=トレーニング刺激)の大きくなる”レッドゾーン”(>90%VO2max)で運動する時間を多くできるという利点があります。”レッドゾーン”(>90%VO2max)の強度での運動を、休みなく続けたら、なかなか長時間運動を継続することは難しく、身体へかかるストレスはトレーニング効果を得るに不十分であることがあります。一方で、HIITは、”レッドゾーン”での運動を、休息を挟みながら繰り返すことにより、結果として”レッドゾーン”での運動を長く確保するトレーニング方法です。つまり、HIITでは”レッドゾーン”での運動を長く確保することが、そのトレーニング効果を十分に引き出すためのカギです。

高強度インターバルトレーニングの5要素

高強度インターバルトレーニングには、大きく5つの要素があります。それは以下の要素です。

  1. 主運動の運動強度(ペース)
  2. 主運動の持続時間(持続距離)
  3. 主運動の反復回数
  4. 緩運動(リカバリー)の運動強度
  5. 緩運動(リカバリー)の持続時間

以上の5つの要素がHIITを形成する5要素になります。これらの要素を適切に組み合わせることで、トレーニング効果の高いHIITを実施することができます。1~3は、主運動、すなわち速いペースで運動している時のパラメータです。つまり、インターバルで、1. どのくらいのペースで2. 何分間(何メートル)の運動を3.何回繰り返すか、ということを意味します。HIITをやるときには、この1~3の要素がよく意識されますが、実は4、5の要素も非常に重要な要素です。4、5は、緩運動、すなわち主運動の間のリカバリーの運動についてです。4.リカバリーをどれくらいの時間とり5.どのくらいペースでリカバリー運動を行うか(あるいは安静にするか)を意味しています。

高強度インターバルトレーニングのよくある失敗例~レストが短すぎる~

前述のとおり、HIITの主目的は、”レッドゾーン”での運動時間を長く確保することです。1~3の部分で、”レッドゾーン”(>90%VO2max)でしっかりと長く運動するメニューを立てるのが、大事なのは広く理解されています。一方で、1~3の設定を達成するために、4~5を適切に調整するということは、ちゃんと意識されていないことが多いように思います。よく見受けられる失敗例は、リカバリーが短すぎ、さらにリカバリーのペースが速すぎて、結果としてインターバル運動の最後の1~2本のペースが当初の予定よりも著しく落ちてしまうことです。これは、リカバリーを短く、リカバリーのペースを落とし過ぎないようにすることで、より効果が高くなるという勘違いにより生じます。繰り返しになりますが、HIITの目的は、”レッドゾーン”(>90%VO2max)での運動時間を長く確保することです。リカバリーを短く、速く、過酷にすることは、この目的とは相反し絶対に両立しません。HIITを成功するためには、リカバリーは無理せずに十分にとって、主運動をしっかりと行う方に注力する必要があります。

適切なリカバリー時間は、競技レベルにより異なる

よくトップアスリートのトレーニングを参考に、自身のトレーニングメニューを作成するという場面を見受けます。トップアスリートのトレーニングは、参考になる場合も多くありますが、HIITのリカバリーについては注意すべき点があります。HIITのように、“レッドゾーン”(>90%VO2max)の運動を反復する際に、必要となるリカバリーの時間は、競技レベルによって大きく異なります。すなわち、トップアスリートであるほど、短いリカバリーで十分に回復し、次の運動を開始できるのに対して、体力レベルが低いほどより長いリカバリー時間を必要とします。このことは、考えてみると当たり前ですが、HIITを行う際にはこのことを考慮していない例を多く見受けます。陸上競技では、1000m程度(3分前後)のインターバル走を、200m程度のジョギング(1.5分弱)で行うHIITがよくあるトレーニングですが、実は、かなりトレーニングの積んだアスリートでないとこの程度の短いレスト時間(1.5分弱)で、”レッドゾーン”の運動を反復することは難しいです。体力レベルの高くない人が、このメニューを真似ると、インターバル走の最後の1~2本のペースが大きく落ちてしまうか、そもそも”レッドゾーン”(>90%VO2max)より低いペースで運動せざるを得なくなってしまいます。これでは、HIITのトレーニング効果を十分に引き出すことはできません。

高強度インターバルトレーニングでは、自信をもって長く休もう!

HIITを成功させるためには、”レッドゾーン”(>90%VO2max)の総運動時間を十分に確保できるように、リカバリー時間を設定する必要があります。その際に、なるべくリカバリーを短くしようとすると上手くいきません。自信を持って十分に休み、その分主運動を失敗しないようにしっかりと走るというマインドを持つとよいと思います。一般にインターバルトレーニングと呼ばれるような、”レッドゾーン”(>90%VO2max)での数分間の運動を繰り返すトレーニングでは、初級~中級者は、主運動の時間と同じ時間のリカバリーをとることをお勧めします。つまり、3分間走であれば、3分程度のリカバリーをとり、数本(5本程度)繰り返すというような具合です。また、主運動がしっかりとできるように、リカバリーのペースを速くし過ぎることも要注意です。疲労度が大きいと感じたら、リカバリーのペースを落としたり、歩いたりしてもよいです。とにかく、HIITでは、主運動をしっかりと行うことに注力しましょう!

参考文献

  1. Schoenmakers PPJM, Hettinga FJ, Reed KE. The Moderating Role of Recovery Durations in High-Intensity Interval-Training Protocols.
  2. Schoenmakers PPJM, Reed KE. The effects of recovery duration on physiological and perceptual responses of trained runners during four self-paced HIIT sessions.
  3. Laurent CM, Vervaecke LS, Kutz MR, Green JM. Sex-specific responses to self-paced, high-intensity interval training with variable recovery periods.
  4. Seiler S, Hetlelid KJ. The impact of rest duration on work intensity and RPE during interval training.

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